医療の現場には、電話・紙・FAXが、いまだにしっかり残っています。「もうそろそろ無くなるだろう」と言われ続けて、なぜか無くならない。これは、どの施設でも共通して見られる課題だと思います。
無くならないのには理由があります。相手のあること、決まりごと、慣れ。そう簡単に変えられないものばかりです。だから今日の話は「全部なくそう」ではなく、ちょっとだけ手間を減らすという、現実的な切り口です。
「なくす」より「減らす・ラクにする」
電話も紙もFAXも、いきなりゼロにするのは現実的ではありません。相手側の事情もあるからです。
そこで考え方を変えます。無くすのが無理でも、それにかかる自分の手間は減らせることが多いんです。「やめる」ではなく「ラクにする」。ここなら、自分の裁量で今日から手をつけられます。
どこに時間を取られているかを書き出す
最初にやるとよいのは、「同じことを何度もやっている作業」を書き出すことです。
- 毎回ほぼ同じ内容を書いている文書や返信
- 紙の内容を、結局あとで手で入力し直しているもの
- 決まった相手に、決まったタイミングでかけている連絡
こうして並べると、「これは型にできそう」というものが見えてきます。繰り返しが多いものほど、自動化やAIと相性がいいからです。
実例①:電話の伝言メモを「型」にする
電話そのものは無くせなくても、電話のあとの手間は減らせます。たとえば伝言メモ。走り書きのメモを毎回清書しているなら、先に「型」を作っておくと一気にラクになります。
ChatGPTやClaudeに、こう頼んでみてください。
医療現場で使う「電話の伝言メモ」のテンプレートを作ってください。
・受けた日時/相手/用件/こちらの対応/折り返しの要否 が一目で分かる形
・あとから見た人が迷わないよう、記入例のヒントも添える
・特定の施設向けではなく、どこでも使える一般的な様式で
出てきた型を印刷して電話の横に置くだけでも、「聞き漏らし→かけ直し」という二度手間が減ります。実際の通話内容をAIに入れる必要はありません。作るのは空欄の型だけです。
実例②:FAXや文書の定型文をたたき台にする
FAXの送付状や、決まった相手への依頼文。ほぼ同じ文面を毎回手で書いているなら、たたき台づくりはAIの得意分野です。
医療機関どうしのやり取りで使う、FAX送付状の定型文を3パターン作ってください。
・「検査依頼の書類送付」「書類の再送」「送付内容の確認のお願い」の3場面
・丁寧だが簡潔に、それぞれ5行以内
・宛先や具体的な内容は【 】の空欄にしておく
空欄つきの定型文を一度作って手元に置いておけば、あとは【 】を埋めるだけ。ここでも、患者情報や実際の文書はAIに渡していません。
AIや自動化が手伝える「地味な部分」
まとめると、派手な仕組みは要りません。効くのはこういう地味な部分です。
- 定型の文章は、AIにたたき台を作らせて、自分は直すだけにする
- バラバラの情報を、AIに表の形へ整理してもらう
- 繰り返しの単純作業を、決まった手順(型)としてまとめておく
どれも「電話・紙・FAXそのもの」を消すわけではありません。でも、その前後にぶら下がっている自分の手作業を軽くするだけで、体感はずいぶんラクになります。
注意:現場の中身は一般論に直してから
ひとつ大事な注意です。具体的な院内のやり方や、誰が分かるような話を、そのままAIに入れないこと。上の実例も、AIに渡しているのは「一般的な型を作って」というお願いだけです。私はいつも、「どの施設にも当てはまる一般的な作業」に直してから扱うようにしています。便利さと安全は、両立させてこそ続きます。
大きな改革は無理でも、小さな10分は今日から
職場全体の仕組みを変えるのは、一人ではなかなかできません。でも、自分の手元の「小さな10分」を減らすことは、今日から始められます。
無くならないものに毎回イライラするより、その手間をちょっとだけ軽くする。その積み重ねが、結局いちばん効いてくると思っています。
【お知らせ】「安全に使う」の完全版をnoteで公開しています
この記事のような「患者情報を入れずに使えるプロンプトの型」を10本まとめた、私の有料note(500円) を公開しています。宣伝にはなりますが、「便利さと安全を両立させたい」という方には合う内容だと思います。
- 患者情報を入れずに使える安全プロンプト集10本(検査説明・議事録・報告書テンプレなど)
- AIに最初に渡すルールファイルの完全版+職種別の追記例(技師・看護・事務)
- うっかり入力してしまった時の対応マニュアル
- 職場に提案できる院内AI利用ガイドラインのひな形(全文)
→ 医療職のためのAI安全活用スターターキット〜「使いたいけど怖い」を、今日おわらせる〜
第1章まで無料で読めますので、まずはのぞいてみてください。
※本記事は一般的な業務効率化の考え方を紹介するものです。実際の運用は各施設の規程に従ってください。特定の製品やサービスの効果を保証するものではありません。

コメント