会議のあとの議事録づくり、勤務交代のときの引き継ぎメモ。どれも地味なのに、けっこう時間を取られますよね。「本来の仕事の前後にある事務作業」が積み重なって、じわじわ疲れる——という方は多いと思います。
こうした文章づくりは、AIがいちばん手伝ってくれやすい部分です。ただし医療の現場では、使い方を一歩まちがえると情報漏洩につながります。今日は「時短」と「安全」を両立させる考え方を紹介します。
いちばん大事な前提から。引き継ぎメモや議事録には、患者さんや職場が分かる情報が含まれがちです。その“実物”をそのままAIに貼り付けるのは絶対に避けてください。この記事は、その手前で使う方法の話です。
まず:AIに「実物」を入れないと決める
引き継ぎメモには、患者さんの状態や、院内のやり取りなど、外に出してはいけない情報が入りやすいものです。議事録も同じで、施設が特定できる話が混じることがあります。
ですから最初のルールはシンプルです。個人や職場が分かる情報を含む“実物”は、AIに入れない。便利さよりも、この線引きが先です。迷ったら入れない、で大丈夫です。
使い方その1:「型(テンプレート)」を作ってもらう
ではどこでAIが役立つのか。いちばん安全で効果が大きいのが、中身ではなく“型”を作ってもらう使い方です。
たとえば、こんなお願いをします。そのまま貼って使えます。
医療現場の会議で使う「議事録のテンプレート」を作ってください。
・見出しは「日時・出席者・決定事項・持ち越し(宿題)・次回までにやること」
・あとから読む人が30秒で要点をつかめる、簡潔な形
・記入例のヒントを薄く添える(あとで消せるように)
・特定の施設向けではなく、どこでも使える一般的な様式で
引き継ぎメモなら、こうです。
勤務交代で使う「引き継ぎメモ」の項目だけを、もれなく整理した型を作ってください。
・「対応中のこと/完了したこと/次の人にお願いすること/注意してほしいこと」が
一目で分かる構成
・書き込むのは人間なので、中身の例文は不要。項目と順番だけ提案してください
・どの部署でも使える一般的な形で
出てきた“空の型”に、自分で中身を書き込んでいく。こうすれば、AIには一般的な枠組みしか渡していないので安全ですし、毎回ゼロから書くより断然ラクです。
ちなみに、議事録の型はだいたいこんな形に落ち着きます。AIを使わなくても、今日これを写すだけでも効果があります。
【議事録】
日時:
出席者:
■ 決定事項(決まったこと)
・
■ 持ち越し(今回決まらなかったこと)
・
■ 次回までにやること(誰が・何を・いつまでに)
・
使い方その2:「自分で書いた一般的な文章」を整えてもらう
もう一つは、自分の言葉で・一般的な形に書いた文章を、読みやすく整えてもらう使い方です。ここでも個人・職場が分かる部分は入れません。
- 箇条書きで殴り書きしたメモを、ていねいな文章に整えてもらう
- 長くなった文を、要点だけ短くまとめてもらう
- 言い回しを、だれが読んでも分かるやさしい表現に直してもらう
頼み方の例です。メモの側は、固有名を伏せた一般的な内容にしてから貼ります。
次の箇条書きメモを、報告用のていねいな文章に整えてください。
・内容は変えず、読みやすさだけを直す
・あいまいなところがあれば、勝手に補わず【要確認】と印をつける
(ここに、固有名を含まないメモを貼る)
「勝手に補わず【要確認】と印をつける」の一行がポイントです。AIは気を利かせて書いていないことまで埋めてしまうことがあるので、先に釘を刺しておきます。事実の中身は自分が責任を持って確認する——ここは人間の仕事のまま残しておきます。
固有名の伏せ方(言いかえの型)は、こちらの記事に対応表つきでまとめています。
→ ChatGPT・Claudeに「医療の文章」を安全に書かせるコツ。患者情報を入れない“型”
注意:会議の「録音」をそのままAIに渡さない
最近は、録音から自動で文字起こしをしてくれるサービスも増えました。便利そうに見えますが、医療現場の会議では注意が必要です。
- 会議の録音には、患者さんの話題や院内の非公開の話が高い確率で含まれます
- 録音データを外部サービスに送ること自体が、職場の規程に触れる場合があります
- 録音するなら、そもそも参加者の了解が前提です
というわけで、私は「録音まるごとAIへ」はおすすめしません。手元のメモを自分で一般化してから、型と整えだけ手伝ってもらう。遠回りに見えて、これがいちばん安全で確実です。
「前後の事務」を軽くするだけでも効く
議事録や引き継ぎそのものをAIに丸投げするのではなく、その“前後の手作業”を軽くする。型づくりと文章整えだけでも、積み重なるとかなりの時短になります。
便利な道具ほど、入口で「実物は入れない」という守りの線を引いておくこと。それさえ守れば、AIは現場事務の心強い相棒になってくれます。まずは“型を作ってもらう”ところから、気軽に試してみてください。
【お知らせ】議事録テンプレを含む「安全プロンプト集」をnoteで公開しています
この記事で紹介した議事録・引き継ぎの型を含めて、現場の文章仕事にそのまま使える実物をひとまとめにした、私の有料note(500円) を公開しています。宣伝にはなりますが、「事務仕事を安全にラクにしたい」という方には合う内容だと思います。
- 患者情報を入れずに使える安全プロンプト集10本(検査説明・議事録・報告書テンプレなど。各「なぜ安全か」の解説つき)
- AIに最初に渡すルールファイルの完全版+職種別の追記例(技師・看護・事務)
- うっかり入力してしまった時の対応マニュアル
- 職場に提案できる院内AI利用ガイドラインのひな形(全文)
→ 医療職のためのAI安全活用スターターキット〜「使いたいけど怖い」を、今日おわらせる〜
第1章まで無料で読めますので、まずはのぞいてみてください。
※本記事は一般的な業務効率化の考え方を紹介するものです。実際の運用では、各職場の規程・守秘義務に必ず従い、患者・職場が特定できる情報はAIに入力しないでください。

コメント