「AIを使ってみたい。でも、何から手をつければいいのか分からない」。そういう声を、医療の現場でよく聞きます。私も最初はまったく同じでした。
今日は、無料で・今日から・順番どおりにやれば迷わないという、私のおすすめの“最初の3ステップ”を紹介します。難しい準備はいりません。スマホかパソコンが1台あれば大丈夫です。
はじめに大事なことを。AIに何かを頼むときは、患者さんや職場が分かる情報は絶対に入れない——これがすべての前提です。便利さより先に、この線引きを守ってください。
ステップ1:まず「無料のAIに登録して、1回しゃべってみる」
最初の一歩は、とにかく一度さわってみることです。代表的なものに、ChatGPT(チャットジーピーティー)とClaude(クロード)があります。どちらも無料で試せる範囲があります。
登録したら、いきなり仕事の話をしなくて大丈夫。まずは、
- 「中学生にも分かるように、◯◯をやさしく説明して」
- 「この文章を、もう少していねいな言い回しに直して」
くらいの、気軽な雑談から始めてみてください。「あ、こんなふうに返ってくるんだ」という感覚をつかむのが、この段階のゴールです。
何を聞けばいいか迷ったら、これをそのまま貼ってみてください。
私はAIを初めて使う医療職です。練習として、
「CTとMRIの違い」を中学生にも分かる言葉で3行で説明してください。
そのあと、私の説明の練習相手になってもらえますか。
自分の専門分野なら、返ってきた答えの「うまい言い回し」と「ちょっと違うところ」の両方が見えます。AIは便利だけど間違えることもある——この感覚を最初につかんでおくのが、実はいちばんの安全教育になります。
登録したら最初に:「学習に使われない」設定を確認する
さわり始める前に、1つだけ設定を確認しておくと安心です。無料のAIサービスでは、入力した内容がAIの学習(改善)に使われる場合があります。これをオフにする設定が用意されています。
- ChatGPT:設定 →「データコントロール」→「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにする(無料プランでは、最初はオンになっています)
- Claude:入力内容が学習に使われるのは自分で許可した場合だけという仕組みです。念のため、設定 →「プライバシー」の「モデルの改善」の項目が意図どおりか一度見ておくと確実です
メニューの名前や場所はときどき変わるので、見つからないときは「サービス名+学習させない設定」で公式ヘルプを確認してください。
そして大事なこと。この設定をオフにしても、「患者さんや職場の情報は入れない」という線引きは変わりません。設定は保険、線引きが本体です。
ステップ2:「自分の面倒な作業を1つだけ」渡してみる
感覚がつかめたら、次は自分がいちばん面倒に感じている作業を、1つだけ渡してみます。ここでも、患者さんや職場が分かる情報は入れません。一般的な形に直してから頼むのがコツです。
たとえば、こんな使い方から。
- 長い説明文のたたき台を作ってもらう
- ばらばらの項目を、表に整理してもらう
- 手順を、分かりやすい順番に並べ直してもらう
たとえば、勉強会や掲示物の案内文なら、こう頼めます。そのまま貼って、【 】だけ埋めてください。
院内スタッフ向けの勉強会の案内文のたたき台を作ってください。
・テーマ:【 】/日時:【 】/場所:【 】
・忙しい人が10秒で要点をつかめるよう、箇条書き中心で
・かたすぎない、丁寧な文体で
・特定の施設向けではなく、どこでも使える一般的な形で
具体的な日時やテーマは、AIに渡さずあとで自分で埋めるのがコツです。渡しているのは「一般的な型を作って」というお願いだけ。これなら安全に、それでいて一気にラクになります。
ポイントは、完璧を狙わないこと。出てきた文章は必ず自分の言葉に直す前提で、「下書きを手伝ってもらう」くらいの気持ちで使うと、ぐっとラクになります。
ステップ3:「学んだことをためる場所」を1つ決める
3つめは、AIから得たヒントや自分のメモをためておく場所を決めることです。せっかくの学びが流れていかないように、置き場所を1つ作っておきます。
無料で始められるものなら、Obsidian(オブシディアン)のようなメモアプリや、ふだん使っているメモ帳・ドキュメントでも十分です(Obsidianは本体無料。複数端末での同期などの追加機能だけ有料です)。大事なのはアプリの種類ではなく、「気づいたら、ここに書く」と決めておくこと。
「相談する(ChatGPT・Claude)」→「ためる(メモアプリ)」という流れができると、学びが少しずつ積み上がっていきます。
3ステップのまとめ
| ステップ | やること | 今日のゴール |
|---|---|---|
| 1 | 無料のAIに登録して1回しゃべる | 「こう返ってくるんだ」を体感する |
| 1.5 | 学習に使われない設定を確認する | 安心して練習できる状態にする |
| 2 | 面倒な作業を1つだけ渡す | 「型のたたき台」を1つ手に入れる |
| 3 | ためる場所を1つ決める | 「気づいたらここに書く」を決める |
3つを一気にやらなくていい
ここまで3ステップを紹介しましたが、今日ぜんぶやる必要はありません。まずはステップ1だけ。登録して、1回しゃべってみる。それで今日のぶんは十分です。
医療の仕事は、ただでさえ忙しくて疲れます。だからこそ、AIは根性ではなく仕組みで自分をラクにするための道具として、無理のないペースで付き合っていくのがいちばんだと思っています。
3ステップに慣れてきたら、次の一歩は「AIに最初に守りのルールを渡す」ことです。やり方は別の記事に詳しく書きました。
→ AIに「これだけは守って」を最初に渡す。情報漏洩を防ぐルールファイルの作り方
【お知らせ】この「最初の一歩」の完全版をnoteで公開しています
この記事の3ステップの先——「実際の仕事でどう安全に使うか」をひとまとめにした、私の有料note(500円) を公開しています。宣伝にはなりますが、「始めたいけど、事故だけは起こしたくない」という方には合う内容だと思います。
- AIに最初に渡すルールファイルの完全版+職種別の追記例(技師・看護・事務)
- 患者情報を入れずに使える安全プロンプト集10本(検査説明・議事録・報告書テンプレなど)
- うっかり入力してしまった時の対応マニュアル
- 職場に提案できる院内AI利用ガイドラインのひな形(全文)
→ 医療職のためのAI安全活用スターターキット〜「使いたいけど怖い」を、今日おわらせる〜
第1章まで無料で読めますので、まずはのぞいてみてください。
※本記事は一般的なAI活用の考え方とツールの紹介で、特定のサービスの利用を勧めたり効果を保証したりするものではありません。いずれのツールにも、患者・職場が特定できる情報は入力しないでください。各サービスの料金や無料範囲は変わることがあるため、最新の公式情報をご確認ください。

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