「告示研修、受けた?」——ここ数年、技師どうしの会話で増えたやりとりです。でも、いざ聞かれると「名前は知ってるけど、何をするのかよく分からない」という人も多いのではないでしょうか。
今日は、この告示研修の全体像を、受ける前に知っておきたい人向けにやさしく整理します。同業向けのニッチな話ですが、これから受ける人・後輩に説明する立場の人の「最初の地図」になればうれしいです。
研修の内容・申し込み方法・運用は変わることがあります。正確な最新情報は、必ず日本診療放射線技師会(JART)の公式ページや所属する都道府県技師会でご確認ください。この記事は全体像をつかむための入口です。
位置づけ:「受けた人が、できるようになる」ための研修
まず前提から。2021年10月の法改正で、診療放射線技師の業務範囲が広がりました。造影検査や核医学検査における静脈路の確保、造影剤・放射性医薬品の投与、抜針・止血などです(この経緯は働き方改革とタスクシフトの記事で書きました)。
ただし、これらの拡大業務は免許を持っていれば自動的にできるわけではありません。厚生労働大臣が指定する研修——いわゆる告示研修を受けた人が、行えるようになる設計です。
つまり告示研修は、「義務だから受けるもの」というより、拡大業務という選択肢を自分に解放するための鍵と捉えるのが実態に近いと思います。
中身:大きく「基礎研修」と「実技研修」の2段構え
研修は大きく2つのパートに分かれています。
| パート | 形式 | 概要 |
|---|---|---|
| 基礎研修 | e-ラーニング(オンデマンド) | 都合のよい時間に視聴し、オンラインの確認試験を受ける |
| 実技研修 | 対面(各都道府県で開催) | 1日プログラム(原則土日)。講義動画で流れを学び、グループに分かれて実技を体験 |
実技研修では、静脈路確保をはじめとする拡大業務の項目を、模型などを使って順に体験していきます。「動画で学ぶ→手を動かす」の2段構えなので、注射などの手技が初めてでも、いきなり本番ということにはなりません。
※開催形式・項目・日程は年度や地域で変わることがあります。申し込み前に公式情報の確認を。
受ける前に確認しておきたい3つのこと
① 職場の方針
拡大業務を実際にやるかどうかは、施設の方針次第です。「研修を受けても、うちではやらない」という職場もあれば、積極的に進める職場もあります。受講費用の補助や出張扱いの有無も含めて、まず上司・職場に確認しておくとスムーズです。
② 自分の受講歴
この分野の研修は、2015年ごろの「業務拡大に伴う統一講習会」から続く経緯があり、過去の講習の受講歴と、現行の告示研修の要件の関係は自分で判断せず、公式のQ&Aや技師会への問い合わせで確認するのが確実です。「昔受けたから大丈夫」の思い込みがいちばん危ない、と覚えておいてください。
③ 申し込みの窓口
申し込みや日程の情報は、JARTと各都道府県の技師会が窓口です。実技研修は開催日程・定員が限られることもあるので、受けると決めたら早めに情報をチェックしておくのがおすすめです。
受ける意味:業務のためだけじゃない
正直に言うと、「職場で拡大業務の予定がないから、受ける意味あるの?」という声も聞きます。私の考えはこうです。
- 選択肢の確保:転職や異動で環境が変わったとき、「受けてある」ことがそのまま強みになります。研修は受けたいときにすぐ受けられるとは限りません
- 安全の学び直し:注射・薬剤・急変対応まわりの知識は、拡大業務をやらなくても現場の安全意識に還元されます
- 職種の流れを体感する:タスクシフトは職種の輪郭が変わる大きな流れです。その中身を自分の体で知っておくことには、キャリア上の意味があります
役職の記事でも書きましたが、準備しておいたものは、使わなくても腐りません。
まとめ:告示研修は「鍵」。まず公式情報から
- 告示研修は、2021年法改正の拡大業務を行うために必要な研修(受けた人ができるようになる)
- 中身は基礎研修(e-ラーニング+確認試験)+実技研修(対面1日)の2段構え
- 受ける前に職場の方針・自分の受講歴・申し込み窓口の3つを確認
- 受講歴の扱いなど迷ったら自己判断せず、JART・都道府県技師会の公式情報へ
制度の話は取っつきにくいですが、中身が分かれば「自分はどうするか」を落ち着いて決められます。この記事が、その最初の一歩になれば幸いです。
※本記事は研修制度の一般的な概要を紹介するものです。研修の名称・内容・要件・申し込み方法は変更されることがあります。受講の判断・手続きの際は、必ず日本診療放射線技師会・都道府県技師会など公式の最新情報をご確認ください。

コメント